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2008年12月

年末のご挨拶

本年も当事務所をご愛顧下さいまして,

誠にありがとうございました。

また,立ち上げたものの更新頻度が多くない

当ブログをご覧いただいている皆様にも

心より御礼申し上げます。

ご質問をくださった方々,ありがとうございました。

2009年も,わかりやすいブログを目指して,

記事をUPしていきたいと思っております。

本年は,わたし自身といたしましても,

3冊の本を出版させていただきました。

拙い文章であるにもかかわらず,

お読みいただいた方々,大変感謝しております。

来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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税務訴訟をすると…?

こんなご質問をいただきました。

「税務訴訟をするといやがらを受けることはありませんか」

そのようなことはありません。

国民には裁判を受ける権利が保障されています。

憲法32条に規定があります。

その裁判の1つとして行政訴訟が認められています。

行政事件訴訟法、これが準用する民事訴訟法に

規定があります。

行政事件は不服申立て前置(ぜんち)といって、

訴訟をする前に行政不服申立ての手続をします。

行政不服審査法に規定があります。

さらに租税の場合には、国税通則法があります。

税務訴訟をすることは権利として保障されているのです。

「税務訴訟をすると税務調査が厳しくなりませんか」

というご質問を受けることもあります。

しかし、税務訴訟を経験されればわかりますが、

税務訴訟を通じて担当者は証拠の見方を学習されます。

社内で作成し保管している文書が訴訟でどう評価されるか。

そのことが痛いほどわかるからです。

裁判所で証拠がどのように評価されるか。

そのことを理解すると、内部統制や危機管理の重要性が

具体的にわかるようになります。

こうして経験を積まれた会社であれば、

次の税務調査がきたときには、

余裕をもって対応できるようになっているはずです。

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税務訴訟が増加した背景(その4)

引き続き,税務訴訟が増加した背景の話を。

今日は,背景④についてお話します。

④は「納得行かないものは司法で決着をつける

という意識の萌芽」でした。

近年,司法の世界では多くの改革がなされました。

いわゆる司法制度改革です。

弁護士の数が少ないということで,弁護士数を増員。

司法試験の合格者を増加させました。

のみならず,旧来の試験の制度を改正し,

法科大学院(ロースクール)の卒業者が受験する

新司法試験の制度に移行されました。

来年からは,刑事事件で裁判員制度も始まります。

企業不祥事が続くなか,企業の法整備も拡充。

会社法,公益通報者保護法,内部統制など。

裁判所の判決も,企業責任を認めるものが増えました。

特に役員に対する損害賠償額が巨額化しています。

また,いわゆる情報公開法の制定以降は,

行政訴訟に変化がみられました。

行政側の証拠の開示を求め,それを訴訟で

証拠として提出するのです。

裁判は証拠によって動きますので,

従前入手できなかった行政文書の公開は,

行政訴訟を行う方にとって強力な武器です。

税務訴訟も行政訴訟の1つです。

税務訴訟でも課税処分は巨額化しています。

そして,巨額の処分が取り消される判例が

増えています。

旧興銀事件の最高裁判決では3200億円の

課税処分が取り消されました。

こうした法律と判例の変化が起き始めている日本。

テレビ番組でも法律や弁護士ものが増えています。

アメリカのような訴訟社会になるかはわかりませんが,

確実に「納得行かないものは司法で決着をつける」

という社会的風土が芽生えつつあります。

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税務訴訟が増加した背景(その3)

税務訴訟が増加した背景の③について。

前々回,税務訴訟が増加した理由として,

③「株主代表訴訟のリスク」を挙げました。

個人の納税者の場合は問題になりません。

株主が多数いる企業の場合に問題になります。

近年,株主代表訴訟や役員の責任を追及する

訴訟がニュースなどで報道されています。

会社法が制定され内部統制が強化された今日。

裁判所も,会社や役員に対して,

厳しい判断をするようになってきました。

そして,法人に対する課税処分の金額が

高額化している最近の状況を考えますと,

「何も検討せず処分を認めてしまう」ことが

経営判断として適切だったか。

という問題が生じする可能性もあります。

経営判断ですので,

当時の状況から考えることになりますが,

「争っていれば,取り消された可能性がある」

と判断される場合,そうした検討すらしないで,

争わないという判断をした経営判断の当否。

これが株主代表訴訟という形で

追求されるリスクがあります。

株主に対する説明責任の問題ともいえます。

もっとも,争えば取り消されるかどうかを

判断することは容易ではありません。

したがって,専門家に相談することがベスト。

経営判断の材料になるような意見書をもらい,

それを参考に判断するという方法もあるでしょう。

訴訟で争った事案の取消率が,14.2%。

訴訟以前の不服申立て段階で取り消されることも

あることを考えますと,

税務署が行った処分だからというだけで,

「不服申立ての可否を何も検討しない」では,

済まない時代になってきています。

検討したうえでムリな場合,争う必要はありません。

「検討した」ということが重要なのです。

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税務訴訟が増加した背景(その2)

税務訴訟が増加した背景として挙げた②について。

前回,税務訴訟が増加した背景の1つとして,

②「勝訴率が高くなってきた」ことを挙げました。

勝訴率が客観的なデータとして,どれくらいかというと,

直近(平成19年度)では,14.2%(一部勝訴も含む)です。

納税者の勝訴率が14.2%。

この数字は以前に比べるとかなり高くなってきたといえます。

もっとも,こうした数字以上に判決が変わってきたと思うのは,

租税法律主義に忠実な判断が増えてきたことです。

租税法律主義というのは,憲法84条に規定があります。

そこには,次のように書かれています。

「あらたに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,

法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」

課税するためには,法律で要件を定める必要があるのです。

これを「課税要件法定主義」といいます。

また,法律の規定があったとしても,不明確では困ります。

どのようなときに課税されるか納税者がわからないのでは,

課税要件を法律で定めた意味がなくなるからです。

これを「予測可能性」の問題と呼びます。

予測可能性を担保するためには,

課税要件は明確でなければなりません。

これを「課税要件明確主義」といいます。

「租税要件明確主義」と表記されることが

最近の判例では多いですが,同じ意味と理解して構いません。

このように「課税要件法定主義」と「課税要件明確主義」という

2本を柱にする「租税法律主義」。

この大原則は,「課税のルールは国民が決める」ということです。

法律を作るのは国会ですが,国会を構成する国会議員は,

選挙によって選ばれた国民の代表者です。

したがって民主主義の観点からも,法律で規定がないものに

課税することは本来できないはずなのです。

わたしども事務所が代理人を担当したストックオプション訴訟。

従来,課税庁が「一時所得」で申告するよう指導していたところ,

あるときから「給与所得」に見解を変更し,課税処分をしました。

本来,租税法律主義からいえば,法律を改正すべきです。

しかし,法律改正も通達改正もなかった。

この点について,最高裁は「一時所得」で申告した納税者に,

「正当な理由」を認め,加算税の賦課決定を取り消しました。

最高裁は,次のように判示しました。

「このような問題について,課税庁が従来の取扱いを変更

しようとする場合には,法令の改正によることが望ましく,

仮に法令の改正によらないとしても,通達を発するなどして

変更後の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう

必要な措置を講ずべきものである。」

今後,「租税法律主義」は税務訴訟のキーポイントになる。

判例の流れから,そういっていいと思います。

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税務訴訟が増加した背景

前回の記事で触れた「税務訴訟が増加した背景」について,

分析してみたいと思います。

「税務訴訟が増加した背景」としては,

次の4つを挙げられると思います。

① 国側の強引な課税処分が多くなってきた

② 勝訴率が高くなってきた

③ (企業の場合)株主代表訴訟のリスク

④ 納得行かないものは司法で決着をつけるという意識の萌芽

今回は,このうち①についてお話しようと思います。

強引な課税処分が近年増えているように思います。

租税法律主義という憲法の大原則からすれば,

課税要件は法律で明確に定められなければなりません。

ある税法の規定の条文の文言を素直に読んだときに,

この事実には課税できるといえるものでなければならない。

これが本来的なあり方です。

その条文の文言からは,

その事実に課税することが困難であるけれど,

課税する必要がある場合には,法律の改正が必要です。

これを「立法論」といいます。

「立法論」で解決すべきものを,法改正はしないままに,

法解釈というかたちで処理する。

「解釈論」で対応しようとする。

これが最近多くみられる課税処分の特徴です。

もちろん,法律の条文には立法趣旨がありますから,

その立法趣旨や条文の文言から想定される範囲内で,

法解釈をすることは可能です。

けれど,こうした立法趣旨や文言から離れて,

課税するために解釈で要件を拡大してしまうこと。

それは「許されない拡大解釈」であり,違法です。

ここ最近の税務訴訟では,

こうした理由で処分が取り消される事案が増えています。

たとえば,レポ取引(金融取引)に関する税務訴訟がありました。

この事例では,課税庁が敗訴しました。

最高裁でも,課税処分が違法とされ,確定した事案です。

この事件で,東京高裁は次のように判示しています。

「(所得税法161条6号)の『貸付金(これに準ずるものを含む。)』の『利子』…について,専ら経済的な効果に着目して『貸付金』の解釈の範囲を広げ,『これに準ずるものを含む。』との規定と相まってその外延を不明確にする結果をもたらすことは,租税法律主義の内容である租税要件明確主義に沿った解釈ということはできず,租税要件明確主義に反した解釈とならないためには,外延を不明確にすることのない解釈を行うべきであ(る)」

「許されない拡大解釈」と思われる課税処分が増えています。

それが,税務訴訟増加の原因の1つと考えられます。

次回は,②「勝訴率が高くなった」についてお話します。

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著作紹介

     事務担当者からのお知らせです 

 
この10月から始まった当ブログですが、年末のご挨拶として弁護士木山泰嗣の著作をご紹介いたします。

 弁護士が書いた究極の読書術──ビジネスに活かす大人の読書論 定価1,470円(税込) 法学書院 ISBN978-4-587-23350-1
弁護士が書いた究極の読書術

 弁護士が書いた究極の勉強法―小学生から学ぶ大人の成功法則28 定価1,260円(税込) 法学書院 ISBN978-4-587-23225-2
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 小説で読む民事訴訟法―基礎からわかる民事訴訟法の手引き 定価2,100円(税込) 法学書院 ISBN978-4-587-03760-4
小説で読む民事訴訟法―基礎からわかる民事訴訟法の手引き
大学3年生の主人公が弁護士になることを決意し,法律事務所でアルバイトを始め,具体的な事件・裁判等の実務を通じて成長していく姿を描いている。苦手意識が強い民事訴訟法を,ひとつの物語として具体的なイメージが湧くように工夫した「小説で読む」シリーズの第4弾 (法学書院HPより引用)

 司法試験(サバイバルレース)を勝ち抜く合格術―ロースクール前に絶対合格ろう 定価1,995円(税込) 法学書院 ISBN978-4-587-23180-4
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「弁護士が書いた究極の読書術」

        事務担当者からのお知らせです  

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定価1,470円(税込) 法学書院 ISBN978-4-587-23350-1

弁護士が書いた究極の読書術   著者:木山泰嗣

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(法学書院HPより引用)

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税務訴訟が増加している?

次のようなご質問をいただきました。

といっても,いただいてからだいぶ時間がたってしまいました。

(遅くなってしまいまして,申し訳ございません)

(ご質問)

「最近になって税務訴訟が増加している背景にはどのようなものがあるのですか。」

税務訴訟は増加しています。

同時に勝訴案件も増えています。

(勝訴率については,10月8日の記事に書きました)

以前は納税者が勝訴する審級としては地裁(1審)が多かった。

のですが,ここ最近は,最高裁や高裁での勝訴も増えています。

最新の税務訴訟の判例を目にするたびに実感しております。

「税務訴訟が増加している背景」には様々な要素があります。

次回分析してみたいと思います。

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