税務訴訟が増加した背景として挙げた②について。
前回,税務訴訟が増加した背景の1つとして,
②「勝訴率が高くなってきた」ことを挙げました。
勝訴率が客観的なデータとして,どれくらいかというと,
直近(平成19年度)では,14.2%(一部勝訴も含む)です。
納税者の勝訴率が14.2%。
この数字は以前に比べるとかなり高くなってきたといえます。
もっとも,こうした数字以上に判決が変わってきたと思うのは,
租税法律主義に忠実な判断が増えてきたことです。
租税法律主義というのは,憲法84条に規定があります。
そこには,次のように書かれています。
「あらたに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,
法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」
課税するためには,法律で要件を定める必要があるのです。
これを「課税要件法定主義」といいます。
また,法律の規定があったとしても,不明確では困ります。
どのようなときに課税されるか納税者がわからないのでは,
課税要件を法律で定めた意味がなくなるからです。
これを「予測可能性」の問題と呼びます。
予測可能性を担保するためには,
課税要件は明確でなければなりません。
これを「課税要件明確主義」といいます。
「租税要件明確主義」と表記されることが
最近の判例では多いですが,同じ意味と理解して構いません。
このように「課税要件法定主義」と「課税要件明確主義」という
2本を柱にする「租税法律主義」。
この大原則は,「課税のルールは国民が決める」ということです。
法律を作るのは国会ですが,国会を構成する国会議員は,
選挙によって選ばれた国民の代表者です。
したがって民主主義の観点からも,法律で規定がないものに
課税することは本来できないはずなのです。
わたしども事務所が代理人を担当したストックオプション訴訟。
従来,課税庁が「一時所得」で申告するよう指導していたところ,
あるときから「給与所得」に見解を変更し,課税処分をしました。
本来,租税法律主義からいえば,法律を改正すべきです。
しかし,法律改正も通達改正もなかった。
この点について,最高裁は「一時所得」で申告した納税者に,
「正当な理由」を認め,加算税の賦課決定を取り消しました。
最高裁は,次のように判示しました。
「このような問題について,課税庁が従来の取扱いを変更
しようとする場合には,法令の改正によることが望ましく,
仮に法令の改正によらないとしても,通達を発するなどして
変更後の取扱いを納税者に周知させ,これが定着するよう
必要な措置を講ずべきものである。」
今後,「租税法律主義」は税務訴訟のキーポイントになる。
判例の流れから,そういっていいと思います。
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