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2009年1月

税務訴訟はいつでも提訴できるか?

(ご質問)

審査請求をし裁決で棄却されました。

裁決が出たのは1年前です。提訴できますか?

(ご回答)

税務訴訟の中心は「処分取消訴訟」です。

税務署長からなされた課税処分の取消しを求める訴えです。

この取消訴訟を提起するためには,法律上の制限があります。

提訴期間(提訴期限)と呼ばれるものです。

裁決がでると,ご本人に裁決書謄本が送達されます。

この送達の日の翌日から起算して6か月以内が提訴期間です。

裁決が出たことを知った日から6か月以内が期限なのです。

平成16年の行政事件訴訟法改正前は,3か月でした。

現在は6か月に伸びました。

といっても,6か月(半年)です。

この期限を過ぎてしまうと取消訴訟を提起できなくなります。

例外的に「正当な理由」があれば提訴が可能な場合もあります。

この救済規定は,平成16年改正で定められました。

しかしあくまで例外ですので,よほどの事情が必要です。

したがって,裁決から6か月以上たっている質問のケースでは,

処分取消訴訟を提起することは困難といわざるを得ません。

取消訴訟ができないからといっても,

提訴がまったくできなくなるわけではありません。

取消訴訟ではなく「無効確認訴訟」をするという方法もあります。

「無効確認訴訟」は,課税処分の無効を確認してもらう訴え。

法律の概念として「取消し」は事後的に行い効果が遡及します。

これに対して,「無効」はもともと無効であったと考えます。

そのため,この「無効確認訴訟」は提訴期限はありません。

もっとも,判例上「無効」が認められるためには要件があります。

「重大かつ明白な瑕疵(かし)」がある場合のみ無効になります。

ほかにも「公法上の不当利得返還請求」という手段もあります。

これは「還付金等の返還請求」にあたるため,

請求をすることができる日から5年で消滅時効にかかります。

国税通則法74条1項に規定があります。

このように提訴手段は複数ありますが,期限の問題もあります。

そこで,提訴を考えている方は,裁決書を受領されたら,

すぐに専門の弁護士に相談することをおすすめします。

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行政事件は武器対等か?

(ご質問)

国側にある証拠の開示については,訴訟手続上,

通常の民事事件と比べて違いはあるのでしょうか。

というご質問をいただきました。

税務訴訟は課税庁が行った処分の違法性を争います。

その処分を行った際の資料・証拠は課税庁が握っています。

こうした状況では,証拠が国側に偏在しており,

武器対等でないようにも思えます。

この点について,行政事件訴訟法は一応手当てをしています。

平成16年の改正で創設された規定で,

「釈明処分の特則」という定めがあります。

これは民事訴訟法が定める裁判所の求釈明の規定に,

行政事件訴訟法でさらに特則を設けたものです。

具体的には,次のような定めなどがあります。

(行政事件訴訟法23条の2Ⅱ①)

「裁判所は,処分についての審査請求に対する裁決を経た後に

取消訴訟の提起があったときは,次に掲げる処分をすることができる。

① 被告である国…に対し,当該審査請求に係る事件の記録であって当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求めること。

ほかの手段としては,情報公開法があります。

課税庁がもっているであろう資料について,

情報公開請求をかけて開示を求める。

こうした訴訟戦略も,同法が施行されてから可能になりました。

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税務訴訟の記録をみたい

(ご質問)

税務訴訟の記録をみるのは誰でもできますか?

(ご回答)

税務訴訟は「行政事件訴訟」の1つです。

「行政事件訴訟」には「民事訴訟法」のルールが適用されます。

これが原則です(例外は行政事件訴訟法に定めがあります)。

民事訴訟法は訴訟記録の閲覧と謄写について定めています。

裁判所で審理された訴訟記録は,誰でも閲覧できます。

民事訴訟法91条に規定があります。

税務訴訟の記録にもこの条文が適用されますので,

どなたでも閲覧することができます。

裁判所には記録係という場所があります。

そこに行き,事件を特定した上で閲覧申請をすれば,

だれでも訴訟記録を閲覧することができます。

マスコミ関係者の方は,ここで閲覧をして,

訴訟の中身を検討するようです。

弁護士も関連事件や参考になる事件の閲覧をします。

重要な事件であっても,外に出るのは判決文のみです。

これは判例時報,判例タイムズといった雑誌,

あるいは最近ですと裁判所のホームページにも載ります。

けれどその事件の中身をもっと検討したい。

そういう場合は裁判所に提出された証拠や準備書面も

みたくなるものです。

そのときに裁判所での閲覧をするとすべて見ることができます。

意外と知られていませんが,だれでも見ることができます。

もっとも,閲覧制限がかかっているものは黒塗りがあります。

また,閲覧(訴訟記録をみる)は,だれでもできますが,

謄写(コピー)はその事件の利害関係人のみ可能です。

謄写を求める場合は,裁判所に利害関係があることを,

疎明(そめい)する必要があります。

「疎明」というのは,「証明」ほど厳格ではないけれど。

ある程度確からしいことを裁判所に思わせる行為です。

書面で提出することになります。

ご興味がある方は,裁判所に足を運んでみてください。

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処分取消訴訟のほかには?

(ご質問)

税務訴訟には処分取消訴訟しかないのでしょうか?

というご質問をいただきました。

「税務訴訟のカタチ」を書いたときは取消訴訟のみを書きました。

行政法に「取消訴訟中心主義」という言葉があるように,

税務訴訟でも,実際のほとんどは取消訴訟だからです。

税務署長からなされた更正処分の取消しを求める。

源泉徴収の場合には,納税告知処分の取消しを求める。

通常は賦課決定処分もあるので,その取消しも求める。

賦課決定は,過少申告加算税,重加算税などがあります。

(納税告知処分の場合は不納付加算税です)

こうした処分の取消しを求める訴えは,提訴期限があります。

提訴の前に不服申立ての期限があります。

それを徒過してしまった場合に考えられるのが,

課税処分の「無効確認訴訟」,減額更正の「義務付け訴訟」。

「無効確認訴訟」は判例上要件が厳しくなっています。

「義務付け訴訟」も明文化されたのが平成16年改正で,

実効性はまだ判例上明らかではありません。

それ以外にも,生じた損害の賠償を求める国賠もあります。

国家賠償請求訴訟です。

さらに,税金を納付したが「法律上の原因」がない。

としてその返還を求める「公法上の不当利得」請求もあります。

それぞれの状況に応じて,有効な手段を考えることになります。

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役員規程と税務訴訟

内部統制が強く要請される今日においては,

社内規程も充実させる必要があります。

作成していない会社はきちんと作成する必要があるでしょう。

就業規則などは法律上の要請があるため,

作成している会社が多いと思います。

けれど,役員規程については,万全でしょうか。

従業員に対する社内のルールを定めがのが就業規則。

これに対して,役員規程は,

取締役や監査役など役員に対する社内のルールです。

会社法上直接の明文規定はありませんが,

社内規程として作成する以上,税務調査で証拠になります。

たとえば,過大役員給与や過大役員退職金の問題。

「不相当に高額な」役員給与を支払いますと,

通常よりも「不相当に高額な」部分の損金算入が否認されます。

税務調査で昔から多い否認ないし指摘事例です。

役員給与のみならず,多くの規程を設ける以上,

役員規程についても,

証拠としての観点から点検する必要があります。

それは税務調査にたえられる「証拠」という観点だけでなく,

税務訴訟で通用する「証拠」という観点からも必要です。

従来,役員規程を税務訴訟まで意識して作成することは,

あまりなかったと思います。

けれど,訴訟という究極の段階までみすえて,

社内規程も作成していくべき時代になってきました。

来月,そんな観点からお話をする予定で,いろいろ思案中です。

http://www.mizuhosemi.com/20-1362/seminar/hierarchy/president/2832

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新年のご挨拶

木山でございます。

当事務所も本日より2009年の仕事始めとなりました。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

当事務所の人気ブログ「小百合先生」で

木下先生という弁護士が登場しています。

わたしの苗字(木山)はシンプルですが,

あまりない苗字のためか,

よく「木下」,「大山」,「本山」,「犬山」などと間違われます。

電話で「あっ,キヤマです」と名乗りますと,

「あきやま様ですね」といわれるため,

「キ」にアクセントをつけますと,

「ひやま様ですね」といわれたりします。

「木山(キヤマ)」という苗字が聞きなれない苗字のため,

木山家の宿命と思っておりますが,

最近,歌手としてご活躍されている

木山裕策さんが紅白に出られました(おめでとうございます!)。

同じ「木山」さんがご活躍されることは,嬉しいことです。

こちらの木山も頑張りたいと思います。

本年も,どうぞよろしくお願いいたします。

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