« 2009年6月 | トップページ | 2009年8月 »

2009年7月

Wednesday READING-No.14-民法(債権法)改正検討委員会「債権法改正の基本方針」(商事法務)  

みなさん,こんにちは。弁護士の木山です。

今週ご紹介する本は,法律の本です。

本といっても,改正案の検討内容を収録したものです。

日本の民法が施行されたのは1898年。

いまから111年も前の話です。

その後,根本的な改正はありませんでした。

それが現在,民法学者を中心として改正検討委員会がつくられ,

本書にあるような改正案の検討がなされています。

委員長が早稲田大学教授(鎌田薫氏),

事務局長が法務省民事局参与(内田貴氏)です。

この改正案は,民法の中でも「債権法」を対象にしています。

「債権法」といっても,ピンとこない方もいるかもしれません。

民法は,個人の財産について定めた部分と,

結婚や相続などの個人の身分関係を定めた部分があります。

「債権法」は,財産関係を定めたものです。

そして,財産の中でも,個人と個人の契約を定めた部分です。

今日の法化社会では,「契約」ほど重要なものはありません。

この契約のルールに変容をもたらすのが,債権法改正です。

この改正が実現すると,様々な分野に影響が出てきます。

税務訴訟でも,契約内容が問題になるケースが多いです。

課税関係は,民法をの法律関係を前提にするものだからです。

税務訴訟でも,民法上の契約概念が争われるものが多いです。

債権法が改正された場合,

新しい債権法の概念が税務訴訟で争点になると予想されます。

改正の動向に注目したいところです。

本書は,A4サイズで438ページ。

分厚い資料集ですが,改正検討事項をフォローできます。

|

Wednesday READING-No.13-ジェフリー・ムーア=川又政治(訳)「キャズム」(翔泳社)  

みなさん、こんにちは。弁護士の木山です。

学生さんは夏休みに入り、いよいよ夏到来ですね。

さて、今週ご紹介する本は、マーケティングの本です。

この本はマーケティングのなかでも、

ハイテク産業に焦点をあてた本です。

もっとも、そこで分析されている視点は、

すべての産業にあてはめることができますし、

産業以外でも、超えるべき「臨界点」として参考になります。

本書によれば、新しいテクノロジーに基づく製品が

市場に受け入れられるプロセスは、次の支持者によって、

人数が山型(△)に変化していくそうです。

①イノベーター(ハイテクオタク)

②アーリー・アドプター(「ビジョン先行」派)

③アーリー・マジョリティ(「価格と品質重視」派)

④レイト・マジョリティ(「みんな使ってるから」派)

⑤ラガード(ハイテク嫌い)

そして、①~⑤のそれぞれが次に移行する際に、

「キャズム」(溝=みぞ)があり、それを超えないと、

そこでその製品の売れ行きは止まってしまう。

これが本書が説く「テクノロジー・ライフサイクル」です。

そして、その溝を越えることを、

「キャズムを越える」と著者は表現しています。

特に、ハイテク製品を市場に浸透させていくときには、

少数のビジョナリー(進歩派)で構成される初期市場から、

多数の実利主義者で構成されるメインストリーム市場へ

移り変わるところ(上記②と③の間)に、

パックリとした口があり(深い溝=キャズム)、

これを越えることが最重要課題になるといいます。

こうした視点はマーケティングの理論ではありますが、

人の心に浸透するためのプロセスともいえます。

なぜなら、市場で売れるということは、

多くの人の共感を得ているといえるからです。

このように考えると、「キャズム」という理論は、

多くの分野に応用ができる視点かもしれません。

ハードカバーで348頁。

読み応えがある本ですが、その基本理念だけでも、

目を通されると「視点」として役に立つと思います。

|

Wednesday READING-No.12-原島広至「横浜今昔散歩」(中経文庫)  

みなさん,こんにちは。弁護士の木山です。

かなり蒸し暑くなってきましたが,いかがお過ごしでしょうか。

今週ご紹介する本は,写真集のような絵本のような本です。

サブタイトルが「彩色絵はがき・古地図から眺める」です。

サブタイトルのとおり,横浜の昔の写真や絵が登場します。

「昔の横浜」と「いまの横浜」。

同じ場所を対比した写真や地図がたくさん描かれています。

この本はシリーズ第2弾で,第1弾は「東京今昔散歩」です。

両方ともおすすめですが,横浜の方を取り上げたのは,

わたしの出身地が横浜だからです。

今年は開港150周年で,地元の横浜ベイスターズも,

数年前から,2009年に優勝することを目標にしていました。

現在,残念な結果が続いていますが,

7月に入り勝率5割を超える戦いぶりをみせています。

最後までチームを信じて応援したいと思います。

というほど,実は,わたしは横浜ベイスターズファンです。

この本を読んでいると(というより眺めていると),

過去にタイムスリップしたような気分になれます。

自分が生まれていなかった時代を見ることができます。

「現在→過去」という視点です。

そして,本には出ていませんが,自然と,

「現在→未来」という視点も浮かんできます。

舗装もされていない土の道を歩きながら,

21世紀の未来に夢を描いていた先祖に出会えます。

その人たちが描いた未来の姿が,いまここにある。

いまを生きるわたしたちは,そのことに感謝をし,

また,未来の人々にプレゼントを残したいものです。

タイムマシーンに乗ったような気分になれる本です。

読むというより,眺める,みるに近い。

文庫本なので,持ち運びもできます。

第3弾は,どこの街が選ばれるのか,楽しみです。

|

税務訴訟の勝訴率(最新版)

以前に,税務訴訟の勝訴率のお話をしました。

当時は平成19年度のデータが直近だったのですが,

今年の6月に昨年度(平成20年度)のデータが公表されました。

国税庁及び国税不服審判所の公表資料(HP)によると,

次のとおりの勝訴率だったようです。

①異議申立て(8.8% 前年度(11.2%)比 -2.4%)

②審査請求(14.7% 前年度(12.7%)比 +2%)

③訴訟(10.7% 前年度(14.7%)比 -4%)

税務訴訟の勝訴率は,10.7%でした。

平成18年度が17.9%

平成19年度が14.7%

であったことを考えると,2年でだいぶ勝訴率が低下しました。

もっとも,平成18年度,19年度は同種案件の多いものが,

いくつかあったことを考えると(ストックオプション訴訟など),

実際の事件自体の勝訴率が下がったかはわかりません。

平成20年度の税務訴訟(不服申立てを含む)の分析を,

「月刊スタッフアドバイザー」(税務研究会)で連載中の

「ストーリーで学ぶ 現場が知っておきたい税務訴訟入門」で,

解説する予定です(次号2009年8月「第3回」)。

(いまゲラをチェックしている段階です。)

ご興味のある方は,こちらもお読みいただけますと幸いです。

|

Wednesday READING-No.11-藤田宙靖「行政法入門」(有斐閣)  

みなさん,こんにちは。弁護士の木山です。

今週ご紹介する本は,久しぶりに法律書になります。

著者の藤田さんは,現役の最高裁判事です。

行政法学者である藤田裁判官は,

最高裁でも多くの税務訴訟の判決を書いています。

その藤田さんが書かれた行政法の入門書が,本書

内容的には,「入門」というタイトルにふさわしく,

平易な言葉で,ひらがなが多く,わかりやすく書かれています。

口語で書かれているため,

藤田さんの講義を聴いているような気分になれます。

藤田さんは,この本のなかで,次のように述べられています。

「もし,たとえば従来長年にわたって課税対象とされていなくても,したがって,私人の方でもこれは法律上そもそも課税対象ではないのだと信じて経済活動をしていたところ,ある日とつぜんに行政庁の方の解釈が変わって,「前の解釈がまちがっていたのだから,さかのぼって全部税金を払え」などという話になったというようなケースだったとしたならば,こんなばあいにも私人はりくつどおりそれに全面的に応じなければいけない,ということになるのでしょうか?」(147頁)

「税法と信義則」という重要なテーマについて,藤田さんは,

このように,市民感覚に基づいた疑問を提起されています。

そのうえで,次のように書かれています。

「個別的な事情によって,行政庁による法律の公定解釈(通達)がとつぜん変更されたことによって法的信頼をいちじるしく侵害された私人に対しては,たとえば「信義誠実則」などの考え方によりつつ,これを個別的に救済していく,といった方策が考えられなければならないだろうと思います。」(147頁)

私も多くの税務訴訟を担当してきた経験から,

信義則の適用は,納税者の救済手段として有効だと思います。

もっとも実際の裁判では,信義則が適用されていません。

それは,最高裁昭和62年判決の要件があるからです。

けれど,納税者の税務署に対する「信頼」の保護については,

この最高裁判決の考え方を改める必要があると私は思います。

藤田さんの判決には直接あらわれないお考えが,

散りばめられているので,入門書としても面白いですし,

そうでない専門家の方にも,参考になる本だと思います。

|

Wednesday READING-No.10-福士睦「1億人を動かす技術」(ダイヤモンド社)  

みなさん、こんにちは。弁護士の木山です。

今週ご紹介する本は、「1億人を動かす技術」という本。

日本テレビのプロデューサーが書かれた本です。

テレビ製作者の視点からのビジネス書はあまりないので、

それだけでも、参考になる本だと思います。

著者は、テレビの世界を次のようにいっています。

「視聴者の共感を呼び、視聴者をもてなし、視聴者と良いコミュニケーションが取れなければ成立しない、純然たる「ビジネス」です。」(7頁)

このテレビというビジネスを成功させるためには、

「究極のコミュニケーション力」が必要だそうです。

つまり、「最大数の人を引きつけながら、1対1で人を説得する力」が求められると著者はいいます(7頁)。

「現役プロデューサーが、つくり手の立場から明かす、

ありとあらゆるビジネスと人間関係に役立つ

コミュニケーションの「授業」」と銘打たれた本書(6頁)。

テレビをほとんどみない私も、とても勉強になりました。

人に伝えるための技術がわかりやすく書かれた本です。

イラストもあり二色刷りなので、楽しみながら読めます。

|

« 2009年6月 | トップページ | 2009年8月 »