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2011年9月

新司法試験に合格するために2-民法から学ぶ

星野英一先生の「民法のもう一つの学び方」有斐閣

という(隠れた)名著があります。

http://www.amazon.co.jp/dp/4641134405

わかりやすい言葉で,法律の勉強の基本が書かれています。

民法の学習法の本ですが,

他の法律科目の勉強にもそのまま通じます。

特に新司法試験で論文の書き方がしっくりこない方には,

大きなヒントを与えてくれる本だと思います。

民法(法律)を勉強する人は,

何を学ぶべきなのかが,理由も含めて書かれています。

ここで学ぶべきとされている内容が,

新司法試験の論文試験でも問われている力と一致します。

法の体系や原理原則,概念などがなぜ重要なのか,

こういったことを改めて知ることで,

いままでより深い法律の学習ができるようになるはずです。

たとえば,「原則」を勉強する理由については,次の答え。

「 民法典には書かれていないけれども,条文と同じ価値

をもっているような法律命題・準則が,かなりあり,とくに

日本民法はほかの国の民法に比べて多く,重要な法命題

だからです。それらは,フランス民法や旧民法とは違った

考え方をとったからなくなったのではなく,当然のことだから

規定しなかったというのですから,条文と同じように学ばねば,

民法を学んだとはいえないのです。」(93頁)

「用語」や「概念」を学ぶことが大事な理由については,次。

「 学問や技術の分野では,テクニカル・タームが必然的に

存在することは,わかり易い道理でしょう。このことは,とり

わけ法律において著しいのです。用語・概念の理解は,法律

学習の基礎です。」(100頁)

それをなぜ勉強しなければならないのかがわかれば,

それをなぜ答案に書く必要があるのかもわかるはずです。

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新司法試験に合格するために

新司法試験の発表が今月あり,合格率は約2割だったようです。

不合格になられた方には,一所懸命勉強したのに…

という方も多いかもしれません。

合格する方法は,いくつか書籍で書いたことがあります。

ここで改めて,不合格になられた方にお伝えすると,

大事なことは「合格を研究すること」です。

大学受験までの試験は,暗記の力(記憶力)テストでした。

意味がわからなくても用語や年号を覚えれば受かる試験。

これは記憶力などの学習能力を試されているからです。

これに対して新司法試験では実務家になる力が問われます。

裁判官,検察官,弁護士という法曹になる素養があるかです。

いまは法務省が公表している出題趣旨があります。

それをみれば何が求められているかが書かれています。

まずはこれを熟読し(全ての年度について)頭にたたきこむ。

それだけでは実感がわかないと思いますので,

合格した人の話をたくさん聴くのがよいと思います。

合格者体験記を読み込むのもよいですし,

合格者の講演があれば参加してみるのもよいです。

法科大学院の先輩合格者から直接話を聞くのもよいです。

こうした合格情報をいかにたくさん集めるかが,まず重要です。

なぜなら,司法試験は実務家になるための試験であるため,

他の試験とは求められている力が異なっているからです。

ひとことでいば,「知識」と「論理」です。

「知識」は法的知識です。

条文であり,基本概念であり,原理原則,

典型論点をめぐる法解釈の論点の分岐点,

問題が発生する理由,百選掲載判例の結論や規範などです。

この知識は,あくまで「基本的な知識」です。

幅を広げることではなく,深く深く深く理解することが重要です。

わかったつもりの「伝聞法則」,本当にわかっていますか?

というあたりまえの概念を徹底して勉強することです。

事例を通じて,論文試験の過去問を通じて演習を積むことで,

どのような角度から問われても,すらすらと答えられる力,

知らない問題をきかれても,基本原則から自分なりの筋道で

解答を論述できる力が求められています。

こうした部分が「論理」です。法的思考力とjも呼ばれます。

しかし試験で考査の対象になっているのは,論文の答案です。

あたまのなかでいかにすばらしいことを考えたとしても,

答案に示されていなければ採点されません。

論文試験は紙1枚の勝負です。

その答案に書かれたことだけで評価をされる試験です。

そのためには読みやすい文字で,読みやすい流れで,

読みやすい文章で,条文の条項数を正確に示し,

問題となる文言を正確に引用し,バランスよく法解釈をし,

正確に打ち立てた規範に,問題文の事情を拾いながら,

自分の言葉で評価を行い,あてはめを充実させます。

①条文を解釈して規範を定立し,

②その規範に事実をあてはめて,

問題を解決するのが法律家の仕事だからです。

「論理」の中核になる考え方は,「二項対立」です。

利益項量などとも呼ばれますが,法の目的にたちかえって,

大きく2つのベクトルがあることを示したうえで,

そこで問題になる原理原則(条文の趣旨)との兼ね合いで,

どこまで具体的妥当性を探求できるかの悩みを示します。

大前提としては,法的三段論法で書くことも忘れないことです。

法解釈(大前提)と事実認定(小前提)は,別に行います。

答案上,法解釈とあてはめを区別することです。

しかし全体のバランスから重要でない論点については,

短く結論と理由をひとことのみ書き,重要な論点については,

行数をとって丁寧に論証する。こうした感覚も実力のひとつです。

合格するための答案を書くためには,

実際に合格した人が書いた答案(再現答案)を大量に読んで,

研究するのが1番です。そのときにはあら探しはしないこと。

全部の答案に共通している事項を研究することです。

それが合格に求められている力だからです。

以上の正しい勉強を研究し,身につけながら,あとは気合です。

勉強時間がどれくらいがよいかは人それぞれです。

しかし本気で受かりたいのであれば,

勉強時間を最大限に確保した生活に変えていしかないでしょう。

専門家として仕事をするのは,生易しいことではありません。

大して勉強もしていない人を「専門家」と人は思うでしょうか,

ということを立ち止まって考えてみることです。

受かりやすくなった新司法試験のもとでは,

圧倒的な勉強量を確保することが,合格にもつながり,

それだけでなく,合格後の実務でも強力な武器になります。

そこまでするのか?

という人は,そこまでしてでも自分は法曹になりたいのか?

という根本的な問題と向き合って,自分の答えを出すことです。

不合格の理由を他に向けているのは,本気とはいえません。

自分ごとでとことん考え,悩んで,たくさん勉強する。

そのことで運もやってくると思います。

わたしも苦労し,つらく悲しい想いをしていました。

大きな壁が立ちはだかる感覚はよくわかります。

でもやるしかありません。

【関連書籍】

○「弁護士が書いた究極の勉強法」(法学書院)

 (旧司法試験3回目の不合格からスタートする本)

 http://www.amazon.co.jp/dp/4587232254

○「勉強が続く人の45の習慣」(法学書院)

 (勉強を続けるためのコツを45個挙げた本)

 http://www.jinjour.jp/column/27911.html

○「弁護士が書いた究極の文章術 」(法学書院)

 (読み手のことを考えた文章の書き方を書いた本)

○「もっと論理的な文章を書く」(実務教育出版)

 (論理という感覚にも似た説得力の技術を書いた本)

 http://www.amazon.co.jp/dp/4788907968

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遡及適用の税法(遡及立法)についての最高裁判決

昨日(9月22日)、最高裁第一小法廷で、措置法の改正が、

施行日より前の取引に遡って適用(遡及適用)されたこと

について合憲との判決がありました。

租税法律主義(憲法84条)は、

刑法の罪刑法定主義に似ています。

罪刑法定主義には刑罰不遡及の原則があります。

そもそもにおいて、法律一般の考え方としても、

遡及立法(遡って過去に適用する法律の制定)は、

原則として許されないと考えられています。

租税法においても、遡及課税(遡及立法)は、

原則として禁止されていると考えられています。

武富士事件の補足意見(須藤裁判長)では、一般論として

遡及立法(遡及課税)は許されないと指摘されていました。

しかし刑法と異なり、遡及立法の禁止が、

明文であるわけではない租税法においては、

租税法律主義から当然に導かれる原則とまでは考えられず、

あくまで租税法律主義を定めた84条の趣旨との関係を考える

今回の判決のようなアプローチがでてきます。

(個人的には、「遡及課税禁止の原則」は、

租税法律主義から導かれる原則だと思います。)

租税法律主義は、納税義務を負う納税者に対し、

課税に対する予測可能性を保障するものです。

この「予測可能性」をどのように考えるか、

これがポイントになりそうです。

本判決は「法的安定」というキーワードを使っています。

まず、判決は,84条(租税法律主義)の「趣旨」として、

課税関係における法的安定が保たれるべき要請が

含まれていることを前提にしました。具体的には次のとおりです。

「憲法84条は,課税要件及び租税の賦課徴収の手続が法律で

明確に定められるべきことを規定するものであるが,これにより

課税関係における法的安定が保たれるべき趣旨をも含む」

そして、「法律で一旦定められた財産権の内容が

事後の法律により変更されることによって法的安定に影響が

及び得る場合における当該変更の憲法適合性」についての

合憲判定基準については「諸事情を総合考慮」すると判示。

その上で、本件のような「暦年途中の租税法規の変更」及び

「暦年当初からの適用によって納税者の租税法規上の地位が

変更され、課税関係における法的安定に影響が及び得る場合」

も同様であることが判示されています。

平成16年4月1日施行の改正法を、

平成16年1月1日以後の取引にも適用するという暦年を

前提にした3か月の遡及、という点が本件の特色だからです。

そして、「84条の趣旨」に反するかどうかは、

諸事情を勘案した上で、

「納税者の租税法規上の地位に対する合理的な制約として

容認されるべきものであるかどうか」という基準を立てました。

【税務訴訟(税法)の最新刊】

「租税法重要「規範」ノート」(弘文堂、9月26日発売)

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【税務訴訟の拙著(既刊)】

※ 税務訴訟の判例や実務を1冊にした体系書

   木山泰嗣「税務訴訟の法律実務」(弘文堂)

  (第34回「日税研究賞「奨励賞」」受賞)

※ 小説で「税務訴訟」を描いた作品

   木山泰嗣「小説で読む行政事件訴訟法」(法学書院)

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新刊のご案内(「租税法重要「規範」ノート」弘文堂)

新刊の見本ができました。

「租税法重要「規範」ノート」(弘文堂)。

発売は9月26日(月)ころになります。

http://www.koubundou.co.jp/books/pages/35510.html

http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1106074116

【税務訴訟の拙著】

※ 税務訴訟の判例や実務を1冊にした体系書

   木山泰嗣「税務訴訟の法律実務」(弘文堂)

※ 小説で「税務訴訟」を描いた作品

   木山泰嗣「小説で読む行政事件訴訟法」(法学書院)

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詳細が書かれたページはこちらです。

http://www.lec.co.jp/issue/book/

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