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遡及適用の税法(遡及立法)についての最高裁判決

昨日(9月22日)、最高裁第一小法廷で、措置法の改正が、

施行日より前の取引に遡って適用(遡及適用)されたこと

について合憲との判決がありました。

租税法律主義(憲法84条)は、

刑法の罪刑法定主義に似ています。

罪刑法定主義には刑罰不遡及の原則があります。

そもそもにおいて、法律一般の考え方としても、

遡及立法(遡って過去に適用する法律の制定)は、

原則として許されないと考えられています。

租税法においても、遡及課税(遡及立法)は、

原則として禁止されていると考えられています。

武富士事件の補足意見(須藤裁判長)では、一般論として

遡及立法(遡及課税)は許されないと指摘されていました。

しかし刑法と異なり、遡及立法の禁止が、

明文であるわけではない租税法においては、

租税法律主義から当然に導かれる原則とまでは考えられず、

あくまで租税法律主義を定めた84条の趣旨との関係を考える

今回の判決のようなアプローチがでてきます。

(個人的には、「遡及課税禁止の原則」は、

租税法律主義から導かれる原則だと思います。)

租税法律主義は、納税義務を負う納税者に対し、

課税に対する予測可能性を保障するものです。

この「予測可能性」をどのように考えるか、

これがポイントになりそうです。

本判決は「法的安定」というキーワードを使っています。

まず、判決は,84条(租税法律主義)の「趣旨」として、

課税関係における法的安定が保たれるべき要請が

含まれていることを前提にしました。具体的には次のとおりです。

「憲法84条は,課税要件及び租税の賦課徴収の手続が法律で

明確に定められるべきことを規定するものであるが,これにより

課税関係における法的安定が保たれるべき趣旨をも含む」

そして、「法律で一旦定められた財産権の内容が

事後の法律により変更されることによって法的安定に影響が

及び得る場合における当該変更の憲法適合性」についての

合憲判定基準については「諸事情を総合考慮」すると判示。

その上で、本件のような「暦年途中の租税法規の変更」及び

「暦年当初からの適用によって納税者の租税法規上の地位が

変更され、課税関係における法的安定に影響が及び得る場合」

も同様であることが判示されています。

平成16年4月1日施行の改正法を、

平成16年1月1日以後の取引にも適用するという暦年を

前提にした3か月の遡及、という点が本件の特色だからです。

そして、「84条の趣旨」に反するかどうかは、

諸事情を勘案した上で、

「納税者の租税法規上の地位に対する合理的な制約として

容認されるべきものであるかどうか」という基準を立てました。

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