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2013年5月

「競馬・馬券の払戻金の判決」について

馬券の払戻金について話題を呼んでいた刑事事件の判決が,

本日言い渡されたようです。

結論は有罪ですが,所得区分(所得分類)については,

下記報道によれば,検察官主張の「一時所得」ではなく,

弁護人主張の「雑所得」の認定を行ったようです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130523-00000022-mai-soci

(毎日新聞)

判決文をみていないので詳細はわかりませんが,

上記報道によれば,競馬の馬券の払戻金が,一般的には

「一時所得」にあたること(所得税基本通達34-1(二)にも

その旨の規定があります)は,前提としたうえで,

本件のような継続性があるものについては,

「一時所得」とはいえないとして,「雑所得」と判断したようです。

一時所得の要件は,所得税法34条1項に規定があります。

①他の8種類の所得(一時所得・雑所得以外)にあたらないこと

②営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の

 一時の所得であること

③労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を

 有しないものであること

3要件すべてを満たす必要があり,いずれも消極要件です。

本件は②を満たさないという判断かと思われます。

そうすると,他の9種類の所得にあたらないことになる結果,

バスケット条項としての「雑所得」(所得税法35条1項)になる,

ということになります。

所得税法が定める「所得区分」は,10種類あります。

どの所得にあたるかで,税額が変わるため,

本件に限らず,昔から税務訴訟で争いが絶えません。

所得税法は,そもそも,「○○」は「○○所得」と,

具体的に定めているわけではありません

(「給与所得」を定めた所得税法28条1項は例示列挙

をしていますが,それでも,「これらの性質を有する給与」

という要件があり,これは,抽象的なため,該当性が争わ

れる訴訟がよくあります。)

その所得が,どのような原因で,どのような理由で,

どのようにして得たものなのか,担税力はどうか,

こうした観点から,最終的な所得区分は決まります。

そもそも,「競馬の払戻金=すべて一時所得」という

発想の仕組みではないのです。

過去に争われたストック・オプションの利益についても,

所得を得た原因等により,さまざまな所得区分になります。

刑事事件の判決が「雑所得」と理由で述べたことで,

所得区分そのものが争いの軸になっていると思われる

行政事件(処分取消訴訟・税務訴訟)の結論がどうなるか,

注目されます。

なお,税法における「所得区分」は,当然ながら,

通達ではなく,所得税「法」の解釈と適用により確定します。

所得税基本通達34-1に,

「次に掲げるようなものに係る所得は,一時所得とする。」

とあり,その1つとして,

「競馬の馬券の払戻金」(同通達34-1(二))とあっても,

「一時所得」を定めた所得税「法」34条1項には,

そのような記載はなく,上記3つの要件があるのみです。

したがって,裁判所の判断は,しごく当然のものであり,

法の要件を丁寧にあてはめた帰結ということができます。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/130523/waf13052322510036-n1.htm

(産経新聞)

もっとも,こうした判断が確定した場合(特に処分取消訴訟

でそのような判断がなされ確定した場合),上記通達の

規定は不十分な記載になるため,この点の改正は必要に

なってくる可能性があります。

一時所得は「2分の1課税」(所得税法22条2項2号)

であるため,通常は,納税者が一「時所得」を主張し,

課税庁が「雑所得」を主張することが多いです。

今回は,所得から控除できる経費的なものの範囲が

争いになり,それ次第で税額が大きく変わる事件でした。

一時所得の場合は,控除できる額は,

「その収入を得るために支出した金額」で,

かつ「その収入を得るために生じた行為をするため,

又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した

金額に限」られています(所得税法34条2項)。

これに対して,雑所得は「必要経費」を控除すると

されており(所得税法35条2項2号),このあてはめを

めぐり本件は,「一時所得」か「雑所得」が争われました。

もっとも,あくまでこの判決は,脱税(所得税法違反)を

問うた「刑事事件」です。

馬券の払戻金の「所得の性質」(所得区分)は,

まだ判決の出ていない処分取消訴訟,つまり,

民事事件(行政事件)で結論が出ることになります。

【関連書籍】

『税務訴訟の法律実務』(弘文堂)

http://www.amazon.co.jp/dp/4335354762

『税理士のための税務訴訟』(税務研究会)

http://www.amazon.co.jp/dp/4793119867

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新刊(エッセイ)のお知らせ(木山泰嗣 『小さな達成感、大きな夢』弘文堂)

2013年,最初の1冊がもうすぐ発売になります。

小さな達成感、大きな夢―木山弁護士​、今日も全力投球』

(弘文堂・2013年6月上旬発売予定)

Web

これまで書いた単著は22冊。

本書が23冊目になりますが,エッセイは初めてです。

昨年10月に完成した原稿を,半年以上かけて,

加筆・修正を繰り返してきた作品です。

法学部の学生さんや,法科大学院生の方,

司法試験などの資格試験を目指される方はもちろん

法律とは離れた話題も書いていますので,

(小学生,中学生,高校生,大学生のころのエピソード,

両親等との関係,これまで刊行した本のエピソードなど)

特に法律系の勉強をされている方でなくても,

楽しんでいただければ嬉しく思います。

小さな達成感、大きな夢―木山弁護士​、今日も全力投球』

(弘文堂・2013年6月上旬発売予定)

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ソフィアビジネスローセミナー(上智大学法科大学院)

上智大学法科大学院主催のビジネス法務セミナー(ソフィアビジネスローセミナー)の第2回に登壇することになりました。

日時は,6月6日(木)18時45分~20時30分。

テーマは企業の税務リスクです。

上智の在校生,卒業生であれば参加できるようです。


http://www.sophialaw.jp/news/news_130430_01.html

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