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2015年3月

『法学ライティング』(弘文堂)の立ち読み

法学部生向けに「法律文章の書き方」の基本を,実践形式で解説した新刊『法学ライティング』(弘文堂 http://www.amazon.co.jp/dp/4335356129 )が発売されましたが,以下の弘文堂ホームページで,「立ち読み」ができます。

ご覧いただければ幸いです。

http://www.koubundou.co.jp/book/b194268.html

2014年度に授業で実施した「法学ライティング」の受講生(青山学院大学法学部「司法コース」2年生の有志16名)にも参加していただき,文章の書き方について議論(会話)をしています。台本なしで行った収録でアドリブですので楽しく読めると思います。学生目線で「文章の書き方」の悩みを共感でき,学生目線での書き方の工夫も学べる1冊になっていると思います。

これから新入学をむかえる法学部生,法科大学院生の方に読んでいただけると,参考になるのではないかと思います。

なお,本書のライテイング手法は,実務家になるための試験である司法試験でもそのまま役立つものですが,法学部に入学された方がみなさん司法試験を受けるものではありませんので,法学部を卒業したあとに社会人としても通用するコミュニケーション力が身に付くように解説内容も考えました。もっとも,そのような実務能力は法律家にまさに求められる能力ですので,結果として論文試験のための書き方としてもそのまま使える方法になると考えています。

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外れ馬券の経費性(最高裁平成27年3月10日第三小法廷判決)

昨日,最高裁で,馬券事件(刑事事件)の判決言渡しがありました。

判決文は,裁判所のHPで閲覧できます。

1審,控訴審と同様に,本件における馬券購入で得た所得は,一時所得(所得税法34条1項)ではなく,雑所得(所得税法35条1項)にあたるというものでした。

そして,雑所得にあたる以上,外れ馬券の購入費用についても,「必要経費」(所得税法37条1項,35条2項2号)として算入できるという判断です。

一時所得にあたるためには「非継続性」要件といわれるものがあり,「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」であることが必要になるのですが,「数年以上にわたって大量かつ網羅的に,一日当たり数百万円から数千万円,一年当たり10億円前後の馬券のを購入し続けていた……購入の態様」にかんがみて,「非継続性」要件は満たさないとされました。

所得税法34条1項に定められている上記の「非継続性」要件については,これを満たすか否かの判定をどのような基準で行うべきかが問題になりますが,この点について,最高裁は,「所得税法上,営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時所得ではなく雑所得に区分されるところ,営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。」と判示しています。

所得税基本通達34-1には「次に掲げるようなものに係る所得は,一時所得に該当する。」という柱書のもとで「(二)競馬の馬券の払戻金」が挙げられているため,一般的な娯楽としての馬券購入による所得は「一時所得」であると考えられていますが,所得税法という法律そのものは,所得を得た原因や性質などから,10種類の所得区分(所得分類)のいずれにあたるかをその納税者が得た所得ごとに判定する仕組みになっていますから,最高裁判決の判定は,ごく自然な法の適用とそのあてはめに基づき行われたものだといえます。

「一時所得」にあたると,2分の1のみが「課税標準」としての「総所得金額」に算入されるため(所得税法22条2項2号),通常は,納税者にとって「一時所得」は有利に働くものなのですが,本件では,外れ馬券の購入費用を経費として引けるかが税額を計算するための「所得」を把握するうえで重要な問題になっていたため,「その収入を得るために支出した金額」であり,かつ「その収入を生じた行為をするため,又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」ものとされている,「一時所得」(所得税法34条2項)を適用すると,外れ馬券の購入費用が「直接要した金額」といえずに,経費性が認められない(収入金額から控除することができない)ということがあり,これに対して「雑所得」にあたれば,「事業所得」(所得税法27条1項,2項)と同様に「必要経費」(所得税法37条1項)にあたれば,収入金額から控除できるという規定になっているため,外れ馬券であっても少なくとも「費用」(所得税法37条1項後段)として控除できるという関係にあり,そのために,納税者(被告人)が「雑所得」であると主張し,課税庁(検察官)が「一時所得」であると主張するという,通常の税務訴訟とは逆の主張がなされる状況になっていました。

なお,最高裁は,雑所得にあたるとしたうえで,外れ馬券も必要経費として控除できるとの判断をしています。「外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するということができ,本件外れ馬券の購入代金は同法37条1項の必要経費に当たると解するのが相当である。」との判示です。必要経費を定めた所得税法37条1項には,前段部分(直接対応・個別対応)と,後段部分(間接対応・一般対応)があるのですが,本件がそのいずれにあたると判断されたのかについては,明確には判示されていません(ただし,「収入に対応するということができ」という判示部分からすると,前段に該当すると考えていると読むことができそうです。実際,原判決(大阪高裁平成26年5月9日判決)は,この点について「「直接に要した費用」(所得税法37条1項)に当たり,必要経費として控除される(同法35条2項2号)と解するのが相当である。」と判示し,前段に該当することを判示しています。)。この点については,大谷剛彦裁判官の意見のなかでは両者を分けて論じられていますが,これは法廷意見ではなく個別の意見になります。

なお,本件は,「独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に注目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ,一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるなどの本件事実関係の下では」という特殊事情における判断であり,一般の娯楽としての馬券購入で得た所得について判示をしたものではありません。

最近刊行した『超入門 コンパクト租税法』(中央経済社,2015年2月)第6章第2問では,本件のような特殊事案ではない,一般の娯楽としての馬券購入を想定した事例問題を掲載し,その場合において検討すべき事項の解説や解答例も掲載しました。司法試験の租税法選択者の方など学習に必要な方は,ご覧いただければ参考になるかと思います。

【関連書籍】

『超入門 コンパクト租税法』(中央経済社)

http://www.amazon.co.jp/dp/4502130516

『分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社新書)

http://www.amazon.co.jp/dp/4334037879

『税務訴訟の法律実務(第2版)』(弘文堂)

http://www.amazon.co.jp/dp/4335355904

 

 

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