毎年6月に公表されているも前年度(前年4月1日~当年3月31日)における税務争訟(異議申立て,審査請求,税務訴訟)の統計データが,今年も公表されました。
出典情報は,以下になります。
①平成26年度における異議申立ての概要(平成27年6月・国税庁)https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2014/igi_h26/index.htm
②平成26年度における審査請求の概要(平成27年6月・国税不服審判所)https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2014/shinsa/index.htm
③平成26年度における訴訟の概要(平成27年6月・国税庁)https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2014/sosho_h26/index.htm
今回の3データに共通する顕著な傾向は「件数の大幅減少」です。
①異議申立ての発生件数は,2755件と,前年度よりは16.8%増加(前年度は2358件)ですが,平成20年度の5359件をピークに,平成22年度の5103件から,3000件台,2000件台と,数年で大幅減少となっている傾向に変わりはないといえます。
②審査請求の発生件数は,2030件で,前年度比28.9%減少(前年度は2855件)です。過去10年のピークは平成24年度の3598件ですが,わずか2年で,約1500件の減少となっています。
③最も注目される税務訴訟の件数も,ついに237件まで下がっています。前年度の290件から18.3%減少ですが,過去10年で300件を割ったのは昨年度が初めてのことで,平成23年度には391件あったこと,平成24年度まで毎年コンスタントに約340件以上の発生件数がある年が続いていたことを考えると,ついに237件までになったか,という感があります。
なお,税務訴訟の勝訴率(一部勝訴も含む)は,6.8%。平成21年度に10%を割る5.0%を記録して以降,平成23年度の13.4%以外は,いずれも10%割れ,という状況が続いています。
ヤフー事件,IBM事件,デンソー事件,日産自動車事件,ホンダ事件など,法人税に関する大企業の税務訴訟が昨年あたりから注目されいる税務訴訟ですが,全体の発生件数は実に大きく減っていることがわかります。
平成23年度国税通則法改正により税務調査の手続が法定化され,白色申告でも理由付記が必要になったことなどを受けて,調査の件数が減り,処分を打つことに慎重になっている傾向が課税庁サイドにあることも一因かと思われますが,昨年度に続き,全体的に「件数の大幅減少」の傾向が引き継がれています。
平成26年の行政不服審査法改正により,来年4月から,不服申立ての手続が変わることが予定されていますので,この傾向がどのように変化していくのかに注目が必要となるでしょう。
【参考書籍】
・木山泰嗣『税務訴訟の法律実務(第2版)』(弘文堂,2014年)
http://www.amazon.co.jp/dp/4335355904
・木山泰嗣『分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社新書,2014年)
http://www.amazon.co.jp/dp/4334037879
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